どうやったら、誰もが交渉を成功させる仕組みを作れるのだろうか?
総合商社丸紅での33年間の交渉実績から、ある結論を導き出しました
商社時代、自分で、試行錯誤を繰り返しながら、交渉を重ねてきました。
誰かに交渉方法を教えてもらうわけでもなく、何度も痛い目にも合いながら、交渉力に磨きをかけ、交渉上手と言われるまでになりました。
ただ、部下に、なかなかそのノウハウを伝えるのは難しいと感じていました。
自分ができるのと、他人をできるようにするのは全く異なると痛感しました。
交渉は、個人の得手不得手が大きく影響するのだろうと考えていました。
しかし、独立後には、“誰もが交渉を成功させる仕組み”があるはずだと信じ、自分の交渉ノウハウを体系化して、世に広めたいと考えるようになりました。
高校2年の時、父親が経営するスポーツ店が倒産
かつて、都内のとある小学校の近くで、父親がスポーツ店を経営していました。
当時は、スポーツ用品を専門に扱う大型店はまだない時代です。
私も時々店番などをして、とても愛着のある店でした。
ところが、私が高2の時に、倒産してしまいました。
販売先からの値下げ要請をそのまま受け入れたり、在庫を持ち過ぎたりしたことが原因でした。
真面目に働いていても、商売は上手くいかないことがある。お人好しが災いすることもある。
当時の私の率直な感想でした。
社会人になって数年が経った時、ふと思いました。
当時、父親はきちんと交渉していたのかなと。
私がもっと大人であれば、代わりに交渉でき、結果が変わっていたかもしれないと。
入社3年目までは、勢いで交渉を乗り切ることで成功できた
アパレル部門配属直後から、粘り強くあきらめない交渉力、逆境での強さには定評がありました。
根性と熱意で取引先に接するスタイルも、若手ということもあり、受け入れてもらえていました。
ただ、当時、「今は上手くいっているものの、これから先も、本当にこの勢いに任せたやり方で
いいのか?」という迷いにも似た想いが浮かんでくることもありました。
その後、壁にぶち当たることになる。信頼関係という壁に
その後、強気の交渉に限界を感じることになります。
継続的なビジネスの場合、初回は強引な交渉で成功したとしても、相手が2回目から警戒を強め、
契約に至らないケースが散見されるようになってきました。
交渉のやり方を変えてみるなど、いろいろ試みましたが、ダメでした。
その時、相手との真の信頼関係がなければ、交渉はうまくいかないことにやっと気づいたのです。
信頼関係を築くには、相手の価値観、ニーズ、本心を理解しなければならない。
すべては傾聴からはじまると考え、心理学を学びました。
傾聴力、質問力を身につけると、相手を深く理解することができ、信頼関係構築に繋がりました。
アパレル製品の発注先が納期遅れを起こした時も、相手の話をじっくり聞きました。
「予期せぬ事態が理由ということは分かったが、もう少し早く連絡が欲しかった」とだけ伝えました。
その後は、私が困った時は、最優先で対応してもらえるようになり、随分助けられました。
信頼関係は交渉の壁ですが、乗り越えれた後は、困難から守ってくれる盾に変わるのです。
部下に交渉ノウハウを伝え、成果を出させる難しさに直面する
自分自身の交渉スキルは上達し、結果も出せるようになってきました。
33年間で携わった交渉は、1万件になります。
営業では1時間の交渉で1億円超の成約獲得、価格交渉では2億円のコスト削減、
他にも1年超の滞留売掛金を3か月で回収等を実現しました。
そうなると次は、部下への指導が求められることになります。
同じ成果を出せるように交渉ノウハウを身につけさせるようにと、指示を受けます。
しかしながら、交渉の得手不得手や性格などの違いもいあり、結果にバラツキが出てきます。
併走しながら助け船を出す、そんなやり方で、何とか成果を上げる日々が続きました。
やはり、交渉は、ケースバイケース。
刻々と状況が変わっていく中で、臨機応変な対応が求められます。
これらの対処法を全てマニュアル化するには、膨大になるし、現実的でないと思っていました。
その一方で、何かもっといい方法はないものか、誰もが成果を出せる交渉メソッドはないものか。
そんな想いが、頭の片隅にずっと残っていたのです。
そして、独立後も、この長年のテーマに取り組み続けることになったのです。
良い製品サービスがあるのに、最後の交渉の詰めが甘く受注を逃す
「交渉でもったいないを無くす」これが私の経営理念です。
せっかく、良い製品サービスがあるのに、最後の交渉の詰めが甘いために、受注を逃したり、
悔しい思いをする企業を商社時代から何社も何社も見てきました。
非常にもったいない話です。このもったいないを無くしたいのです。
“正直者がバカを見る”ような社会ではなく、真面目に働いてきた会社や社員が正当に報われる世の中であってほしいと考えています。
今は、先が見えない正解が分からない混沌とした時代です。
交渉力でガードしながら、同時に、交渉力で攻めていく時代でもあります。
私が高校生の時に、倒産した父親の零細企業が重なります。
私の“交渉”の経験を必要としている会社のために役立てたい、そう思っています。
交渉力はプライベートでも役立つ。人生を豊かにしてくれる
交渉といっても、人によって定義や捉え方が違います。
私は、交渉を「自分の目的や目標を実現するために行うコミュニケーション」と考えています。
ビジネスでは、価格交渉、家賃交渉、クレーム交渉、社内の部門間交渉などが頭に浮かびます。
プライベートでは、家族(親、配偶者、子供)とのやりとり、病院での治療、ご近所トラブル、会合の食事内容と予算、家電の値引き、転職時の面接での条件交渉など枚挙にいとまがありません。
私が個人的に交渉力を発揮できて良かったことは、両親の病気に関して、病院や施設とのやりとりで十分な話し合いができ、ベストの形で対応することができたことです。
しっかり準備をして、交渉を重ねることで、真剣さが伝わり、信頼関係が構築されたケースでした。
そんな時、交渉の素晴らしさを実感します。
交渉のプロである弁護士先生向けに心理交渉術をレクチャー
『元“丸紅”の商社マンが明かす どんな相手でも「思い通りに動いてくれる」心理交渉術』を弁護士先生にレクチャーしました。
「思い通りに動かす」のではなく、「(自発的に)思い通りに動いてくれる」ようにするのがミソです。
総合商社で効果が実証済みの心理交渉術を厳選して、お伝えしました。
相手の自尊心に訴える、相手にも勝ったと思わせる納得性の与え方などの心理交渉術です。
心理交渉術に関して、体系的に理解ができ、頭が整理されたとのコメントを頂きました。
どうすれば、交渉で、誰もが同じような成果を出せるのか?
かの弁護士先生たちが口を揃えて仰っていました。
「ハーバード流交渉術など、何冊か交渉の本を読んだが、分かったような分からないような。
結局、頭では何となく理解はできても、実行に移すのは難しい」とのことでした。
正に、これなんです。“分かること”と“できること”は、違うのです。
私は、自分の交渉ノウハウを体系化し直し、実践で通用する交渉術を広めたいと考えています。
必要なのは洗練されたメソッドとその実践方法を手取り足取り伝授することだと確信しています。
そして、2022年11月に、独立前からの長年のテーマであった「誰もが成果を出せる交渉メソッドはないものか」に関する答えをようやく見つけたのです。
それは、私の今までの交渉人生から得た”交渉の極意”を体系的にまとめることでした。
交渉の心構えから始まり、交渉準備の7ステップを経て、ロールプレイで仕上げをし、本番の交渉に臨むプロセスに加えて、実交渉での実践ポイント、押さえておくべき交渉戦術、相手に動いてもらう心理交渉術までを網羅した交渉メソッドを体系化したのです。
それが、『ビジネス交渉力の鍛え方 元商社マンが明かす 最強!最速!の鍛え方!』という1冊の本になり、出版されるに至ったのです。
この本の内容が、「誰もが成果を出せる交渉メソッド」そのものなのです。
おかげさまで、八重洲ブックセンター本店では、4週ビジネス書ランキングトップ10を獲得しました(2023年1月29日~)。
この著書をお読みいただいた企業様から、研修やコンサルティングのご依頼も増えてきています。
ある経営者から社員のモチベーションが上がらないと相談を受けました。
社員の自尊心にアプローチし、自ら動いてくれるような交渉方法を伝授した結果、社員の意識と
行動が変わったという報告をいただき、私が提唱する心理交渉術の効果を実感しました。
トップネゴシエーター(交渉人)育成への想い
私は、交渉の決め手となる準備プロセスを「交渉準備の7ステップ」として体系化しました。
ステップごとのポイントをチェックしながら、次のステップに進むことで、効率よく効果的に準備を行うことができるのです。
そして、次に何をすべきか、手順が分かるようになっています。
これを活用することで、交渉担当者の属人的なバラツキを最小化することができます。
個人的な話になりますが、私は会社に入ってから、心身を鍛えるためにボクシングを始めました。
週1のジム通いで、プロライセンスを取得できたのは、トレーナーのおかげです。
試合形式の練習を見てもらい、実際にトレーナーにミットを構えてもらいパンチを打ち込む。
そのパンチを受けた感触が分かるトレーナーが、その場でタイムリーにアドバイスをくれる。
これが必要なのです。プロのアドバイスは効率的で効果的です。ひとりでは限界があるのです。
私は、トレーナー役として、トップネゴシエーターを育成し、“交渉でもったいないを無くす”
ことを実現したいと本気で考えています。
この文章を読んでくださったことにご縁を感じます。あなたにお会いしてみたいです。
長文お読み頂きありがとうございました。